Nackyのコラム Vol.6 俺達のホームページ
広告代理店勤務、ロックミュージシャン(Blue Color Union)、ベイタウン中年バンドのメンバー、2輪ライダー、数々の肩書きを持つNackyのセンスあるコラムを掲載。



思い出に手を入れる

誰にでも、どうしても手放せない思い出の品という物があるかと思うけど、僕にももちろんある。自分の場合は、それは初めて女の子からもらったバレンタインのチョコの入れ物でもなく、中学生の頃に自分で買った初めてのマトモなギターだ。

当時はアメリカのFenderやGibsonといったブランドは、とんでもない高嶺の花であり、中高生のガキが買うには天文学的な高額ブランドだった。んで、ヤマザキパンや本屋でバイトした金でやっとこさ買ったのが、日本製のコピーモデル・東海楽器のテレキャスターである。実はその前にも、5000円で買ったベースやトムソンのインチキエレキを持っていたのだが、マトモな楽器を買うのは初めて。必死で貯めた85,000円(中学生には大金だ)を握りしめ、清水の舞台から飛び降りる心境で、御茶の水の下倉楽器で買ったのだった。以来、そのテレキャスターは黒いベースと並んで自分のメインギターとして、生まれて初めてのライブから数々のレコーディングにと大活躍してきた。ずっと貧乏で高い楽器が買えなかったこともあるが、その「トーカイ製」ギターは30年もお気に入りのままだ。今では使い込んで塗装は剥げ落ち、フレットは限界まですり減っている。

ところが、2年ほど前から音が細くなってしまい、ノイズも増えてしまったこともあり、次第にあまり使わなくなってしまった。そこで、思い出を再び磨くべく、「トーカイ製テレキャスター改造計画」を打ち立てた。
具体的な改造ポイントは、
(1)特に音の細いフロントピックアップをハムバッキングに交換
(2)ついでにリアピックアップも交換
(3)オクターブピッチが合いにくいブリッジを交換
(4)フレットを打ち直す
(5)ペグ(弦巻き)を高精度のものに交換
(6)キャパシタを0.05MFDのオイルコンデンサに交換
(7)ポッド(可変抵抗器)を500kΩのものに交換
以上である。もちろん、一流パーツを買う金は無いので、数ヶ月前からヤフオクでせっせと買い漁ることにする。ヤフオクに無いものは、定番の激安ショップ「サウンドハウス」だ。
(1)については、キース・リチャーズ先生やアンディ・サマーズ先生、大村憲司先生も施している、テレキャスでは割りと定番的カスタムである。本来ならGibsonのハムがいいのだが、Epiphoneのハムが安くゲットできたので、それで良しとする。(2)は、たまたま大好物のテキサススペシャルピックアップが手に入った。(4)は見積をとったところ4万を超えるので諦め、未塗装の安ネックをヤフオクでゲット。しかし届いてビックリ、メイプルワンピースではなく、指板を上から貼った「貼りメイプル」だった(泣)。まあ仕方ないか。



3連休の日曜日、家族が出かけるので、この日を作業日とする。まずは全てのパーツやネックを10年ぶりにバラバラにしてチェックすると、フロントピックアップとリアピックアップからのマイナス(コールド)が、ハンダが剥がれてポッド裏からとれてしまっている。プラス側(ホット)の配線も外れていて、どうやらこれらが音が細くなったこととノイズが増えたことの原因だったようだ。しかし、使われているパーツは全体に非常に品質の良いもので、加工も丁寧である。さすが東海楽器だ(トーカイ製コピーモデルは現在高値取引されている)。とりあえずピックアップの配線を取り外し、0.05MFDのフィルムコンデンサをポッドに装着しておく。交換用のネックを削り、自分好みのシェイプに近づけるも、つい削り過ぎて妙にスリムなネックになってしまった。本当はブッ太い握りが好きなのだが、取り返しがつかないので、まあ1本ぐらい細いネックがあってもいいかと自分を納得させておく。しかし、いつも使っている極太の弦(0.12〜)を張ってもつかどうか不安である。次に、ハムバッキングピックアップを取り付けるため、ピックガードの穴を拡げる。以前に糸ノコで切った時に曲がって失敗こいたので、今回はアクリルカッターで溝を掘っていく。しかし、アクリルカッターが滑り、ピックガード表面に大きなキズを入れてしまった。その次は、ボディにピックアップを収めるキャビティを掘らねばならない。ルータを持っていないので、仕方なくハンドドリルで穴を開けまくり、壁をプライヤでむしりとって、ノミで仕上げるものの、アルダー木材が意外に硬く難航する。

力技系の作業が終わったので、鼻歌を歌いながらフロントピックアップを配線する。ところが、ここで問題が発生。そのピックアップはもともとリアに付いていたらしく、リード線が短くて届かない。仕方ないので、手持ちのワイヤーをハンダ付して延長だ。コールドのハダカ線をポッド裏にハンダ付してアースとする。ポッドを500kΩの物に換えようと思っていたのだが、元々付いている250kΩのポッドが良い物であったことと、「ロー出し・ハイ受け」という電気の基本を守らないと、チューブアンプを飛ばしてしまいそうなので、このままにすることにした。フロントは男らしくタップはとらずに直結である。リアのテキサススペシャルを取り付け、同様にアースをとる。そこからボリュームポッドを跨いで、ブリッジにアースを引くことにした。元々のピックアップセレクターは、バカ正直に初期のFenderをコピーしていて使いにくかったので、フロントとリアのミックストーンも出せる一般的な配線とした。ハンダごてが当たってボディを焦がさないように、アルミテープでボディをマスキングしていたのだが、これを剥がす時に流血。かなり深く切ってしまった(写真参照・涙)。あまりに血が止まらないので、医者に行こうと思うものの、診せるときっと縫われると思いガマンする。これにて電気系作業は完了。



ピックガードと新しい6ウェイブリッジを取り付け、あとはいよいよネックを取り付ける。ネックに元々開いていたネジ穴の位置が合わないので、メイプル材の丸棒をネジ穴に叩き込んで接着し、新たに穴を開け直し、ボディとの接合部も微調整のため削る。そしてボディと感動の合体!新品の弦を張ってみると…すごいセンターずれ!ヘッドが6弦側に傾き、弦落ちしてしまう。これを直すのに一番時間がかかってしまった。ようやく6本の弦を張ってチューニングし、弦高を調整して早速アンプに繋いで弾いてみると、おお!リアはもう1本のテレキャスと近いパワフルな音!同じテキサススペシャルなので当然か。微妙な差は木材の違いのようだ。そしてフロントは、おおお!すごいパワー!メチャメチャ太い音だ。同様にミックストーンも太い。改造前のチャリーンと軽い音がウソのようだ。しつこくアースもとったので、ノイズもほとんど気にならない。しかし、パワフル過ぎてテレキャスっぽさがチト希薄になったかな。まあ、これはこれで結構使える音なのだけど。

ところで、ネックのスケールが微妙に合わず、ブリッジで調整してもハイポジションがフレット音痴になってしまう。どうやら、ネックエンドを少し削って、ネック全体をブリッジ側に押し込む必要があるようだ。ネックには塗装もしなければならないので、これはまた後日にでも。しかし、全体をしげしげと眺めてみると、ボロボロのボディに付いたピカピカのパーツがかなりヘン。バランス超わりー。

こうして、30年前に買った思い出のトーカイ製のテレキャスターが見事に蘇生した。このギターを弾くと、高校生の頃の思い出が蘇ってくる。生まれて初めてのライブ、パンクバンドに在籍していた頃のライブで暴動が起こってしまったこと、当時つき合っていた女の子、殴り合った友達、キツかった部活の練習(今をときめくハンドボール部)、部活の試合とバンドのスタジオ練習…なぜか中学や高校の頃ばかりのホロ苦い思い出が鮮やかに蘇ってくる。投げたりぶっつけたりしながら30年も使ってきた国産コピーモデル。今では少し無理すればもっといい楽器が買えるのかもしれないが、この先も30年はこのギターを使うのかもしれない。丸1日もかけたオタクな改造、お疲れさん!

Nacky
2008年2月12日


自己紹介
【F1スペシャリストから女性下着博士へ(笑)】

趣味は“バンドとバイク”という、昭和の不良高校生のようなパンクなジジィです。休日はバイクor自転車に乗るかイジるか、野外ライブをするしか過ごし方を知りません。よって、雨の休日は廃人です。

とにかく2つの車輪しかない不安定な乗り物が大好き。モーターサイクルやMTBでムチャ走りをしての生キズが絶えません。また、ギターやベース、ピアノなどの楽器を与えると制止されるまで弾き続け、自作のヘンテコな曲をその場で作りながら歌い続けます(本職はベース)。ジジィはジジィでも、“スーパージジィ”を目指して日夜努力中。若い女性からはイマいちモテないが、オバちゃんやガキんちょ、オカマに対してはいつも爆発的なパワーを発揮します。家庭や仲間うちでの呼び名は「人間に最も近いサル」。

自分のバンドのサイト↓です。
http://www.cyworld.jp/bluecolorunion
「サルは一体どんな音楽を創るんだ?」とご興味のある奇特な方、楽曲の試聴やダウンロードもできますので、是非覗いてみてください。アマチュアミュージシャンの方、コラボも大歓迎!アレンジもいたします。

こちら↓は自己紹介がわりです。アホ丸出しですが(笑)。
http://www.e-enesta.com/ore/flash15/fno282.htm

仕事では長年関わっていたHonda F1の仕事を辞し、イタリア車の広告制作を経て、現在は港区にある某広告代理店のクリエイティブディレクターとして、テレビCMやら広告やらを作っています。なんだか偉そうに聞こえるが、要は宣伝を作る上での何でも屋さんです。元来クルマ/バイク/レースのスペシャリストですが、今はなぜか女性下着のスペシャリスト。ご面倒な広告制作の仕事、よろずお引き受けいたしますのでご指名ください。

I'm OK, even if you give me a message in English,
and I'll certainly reply to you!
Thanx for your coming.

▲このページの先頭


Dreamland]  [便利の代償  [四丁目の朝日  [思い出に手を入れる]  俺達フラッシュ


Copyright(C) 2000 Baytown Chunen-Community Club All rights reserved.
俺達のコラム(Index)  俺達のホームページ TOP     Mail:info_1@oretachi.jp