Nackyのコラム Vol.8 俺達のホームページ

広告代理店勤務、ロックミュージシャン(Blue Color Union)、ベイタウン中年バンドのメンバー、2輪ライダー、数々の肩書きを持つNackyのセンスあるコラムを掲載。




房総を駆けろスリッパ!

自分は大きいクルマは好きじゃない。大排気量とハイテクによるパワーがあっても、鈍重ではつまらない。たとえパワーが無くても、軽くて小さくてシンプルなクルマが好きだ。そういう意味でも、英国のLotusが創り出すクルマは自分にはドンピシャだ。特にコーリン・チャプマン存命時に設計したマシン達、これ最高!

今日の日曜は、友人のZDM1000氏から73年製のLotus Europa(ロータス・ヨーロッパ。スペルが"Europe"じゃないところがミソ)を有り難く借用し、房総方面へと試運転(?)に繰り出した。以前は自分も同型のLotusを所有していたので、乗り込んだ瞬間にそらもう懐かしくてたまらない。車内のウッドとレザーとFRPのニオイ、レトロなセルの音に続いて耳元で響き渡るウェバーキャブの吸気音と、ロータス・ツインカムエンジンの心地よいビート。軽くアクセルペダルを煽るだけで、既にイキそうである。

しかしこのクルマ、異常に運転し難い。まずは極端に低い車高。ノーマルでもたった107cmしかなく、ちょっとサスを落とすと90cm台というとんでもなく低い車高となる。以前に自分が乗っていた時に、近くを歩いていたお子様から「ママ、ほらアレ、スリッパみたいなクルマ!」と叫ばれたことがある。公道を走っていると、隣のフィットがまるでバスのようだ。車高が低いことで知られるMAZDA RX-7の助手席に乗るおねいちゃんも、驚愕の眼差しで見下ろしてくれる。低い故ドライバーは路面に寝そべるようなポジションを強いられる上に、後方にエンジンがある為ドライバーはフロントタイヤ近くに座ることになるので、足元は異常に狭く、3つのペダルはその狭いスペースで場所を奪い合っている。足のデカい人は運転不能だ。それと、よく悪口を叩かれるギアシフトは、シフトノブから車体最後部まで引き回された鉄パイプ製のリンケージにより曖昧な感触を強いられ、いったい何速に入っているのか分からない。またミドシップゆえ後方視界は劣悪で、高速の合流などは他車がいないと信じて突っ込むしかない。さらに、事故ると死ぬかもしれないFRP製ボディなことに加え、ちょっと天気が良いと車内は地獄の暑さとなる(もちろんエアコンなんて無い。そんな物はこの軽さを誇る名車を重くするだけだ)。センタートンネルの中には車体前方から後方のエンジンを繋ぐウォーターパイプが通り、その熱気とラジエターからの熱気が容赦なく車内に入って来る。狭い車内は蒸し風呂だ。実際に、夏は皮膚から塩を吹くぞ。そして何より特徴的なのが、カミソリのようなハンドリング。普通のクルマのつもりで交差点を曲がろうとすると、スピンしてマジでどこかにすっ飛んでいってしまう。もちろんパワステなんて無い。まるで両の掌で路面を掴んでいるようなダイレクトさだ。このようなキャラ立ちまくりのクルマ故、初見のドライバーは発進さえままならず、真っすぐ走らせることも困難だろう。それを御すことができさえすれば、素晴らしいドライビングフィールと性能が味わえるのだ。


Photo: 極端に低い車高と軽量のFRPボディにエンジンをミドシップマウント。本機は貴重なRHDの本国仕様で、外観上ではノーズウィンカー(LED?)の交換、リアの大型ウィング、前後バンパーのFRP化、マグホイール化等のカスタムがなされている。ミラーはVitaloni製と思われる。


Photo: 自分の身長(175cm)と比べると、その異様なコンパクトさが分かる。大型の羽根は吹雪裕也風味。ADVAN製Sタイヤがちと太すぎるか。リアのキャリロ製コンビライトは、Alfa Romeo Giulia Sprint Voloceと近い型でLotus Elan S4 Sprintとは共通。


Photo: ドラポジは非常にタイト。窓外のガードレールの低さが分かるだろうか。


Photo: 前方視界はこんなカンジ。まさに地を這うように低い。

友人のガレージ(場所は内緒)を出発し、市原の丘陵を駆けるうぐいすラインに向かう。まずこのクルマ、とても調子が良い。さすが旧いクルマやバイクを知り尽くしているZDM氏が自ら整備しているだけあり、主な機関は何の不安も無く機能している。そう、ロータスは通常ガラスのように壊れやすいクルマなのだ。本国では頭文字をとって「Lot Of Trouble Usually Serious」なんて略称で揶揄されるぐらい。耳元で唸る名機ロータス・ツインカムエンジンは、たった1.6リッターとは思えないほどトルクフルで感動的だ。ハンドリングはシャープ&クイックで、どんなコーナーも難なく旋回する。自分が前に所有してた同車も相次ぐトラブルを克服して最後は絶好調だったのだが、この個体も最高である。履いているSタイヤと強化エンジンマウントにより乗り心地は良くないが、それを元に戻せば、Lotus Europaは実はかなり乗り心地が良い。この運動性能は、実際に運転した人しか味わえない感動である。しかし、すれ違うクルマや歩行者からの視線が痛い痛い(笑


Photo: キャビン後方に縦置きにミドシップマウントされる名機Lotus Twin Camビッグバルブエンジン。ウェバーDCOE40キャブを2機装備し、強化型エンジンマウントに交換され、バックボーンフレームのY字を繋ぐマウントアームはステンレス製に交換、オルタネータのプーリーは軽量型に交換されている。エキパイとサイレンサはノーマルだが、点火系はキャブ下のデスビから車内に移設されていた。サスペンションはTRACK SPAXでかなり締め上げられており、リアブレーキはFord Escort用を流用しディスク化されている。ギアボックスはゴルディーニ用の5速。ホイールはRSワタナベの13インチマグネシウム、タイヤはADVANのSタイヤを履いていた。


Photo: ホイールハウス横の激狭い足元に並ぶ小型のペダルで左向きのドラポジを強いられる。クラッチとブレーキはオルガン式。ステアリングホイールはPrototipo製に換装。コーンが浅いために腕が伸び切ったポジションとなる(ノーマルは一回り大型)。ローズウッド製のダッシュに埋め込まれたLucas製のメーターは、右からレブカウンター、スピード、アンメーター、油圧、水温、フュエル。ハーネス類は上手く収納しないとムキ出しとなる。高いセンタートンネル内にはオールドLotus特有のバックボーンフレームが通り、その中をウォーターパイプ、シフトリンケージ、ハーネスが通る合理的な設計。リレーとイングニッションがコラム下に飛び出しているのはご愛嬌。ブルーの5点式ハーネスはsparco製。日本の気候では問題となるラジエターも、アルミ製に換装済み。

R297と裏道を使い勝浦まで行き、そこでランチを食べてR128で安房鴨川まで向かう。ここは海を見ながらゆっくりと流し、鴨川から長狭街道のワインディング、そして志駒川沿いのワインディング・通称「もみじロード」をスポーティに攻め込んでみる。途中、車高を落とした国産某スポーツカーと激しいバトルになったが完全勝利(こらこら)。40年以上前に設計されたクルマであるが、公道のワイディングであれば現代の大排気量スポーツカーを充分以上に凌駕できるのは凄いことだ。この個体の特性として、トー角の設定かSタイヤとSPAXサスのセッティングからか、高速コーナーではオーバーステア気味に仕上げられており、ミドシップ特有のリアを巻き込むような挙動がたまに出るが、限界位置が高いのでトラクションを活かしてのグリップコーナリングが可能。それだけにリアハブとドライブシャフトへの負担が若干気になるが…。富津中央ICから高速に乗り、パワーバンドまでしっかりと引っぱり加速を試みると、ぬぅあkm/hまでは余裕で出ることが確認された。ペタンコのLotus Europaがふぅわkm/hで高速道路をカッ飛ぶ様は、はたから見るとまるで空飛ぶスリッパのようだろう。


Photo: 「みんなみの里」の菜の花畑で出会ったミツバチ。全国的に個体数が減っているらしい。

たっぷりとLotusを満喫し、ガソリンを満タンにして友人ガレージに帰着。懐かしさとLotusを運転できた歓びで、マジ最高の1日だった。ガレージに格納されている大量の旧いベベルを見、彼の愛猫のしばニャンと遊びながら、旧いLotusやDucatiの話で盛り上がる。ここはクルマ/バイク好きのパラダイスだ。んで、やっぱまた旧いスポーツカーが欲しい。走れば全ての操作がダイレクトで、感動的。最初から古いから最新型のクルマが出ても気にならない。そして雨が降れば盛大に雨漏りし、暑くてうるさくてオイル臭い上に、事故れば死ぬかもしれない。いつ壊れるか分からないが、壊れても自分でイジり、直す。しかし、それが良いのだ。それが豊かなのだ。五感を研ぎ澄ませてマシンと対峙し、ハイテクメカに頼らず自分の技量だけで操る。安全設計基準が無く死ぬのが怖いなら、事故らないように乗ればよい。ただし、スポーツマインドと先人の知恵への敬意は忘れちゃいけない。


Photo: ZDM氏のガレージにて、Lotus Sport110との2ショット。このバイクがここにあること自体が凄い。17,8年前のツール・ド・フランスのTTでクリス・ボードマンが駆ったフレームに近い希少な物。コンポはDURA ACE7040の電動シフターを中心に組まれていた。ステムとハンドルバーはChinelli製。


Photo: ZDM氏がサーキットで駆るDucati MHR Mille改NCRレプリカ。こちらはマン島TTでM.ヘイルウッドの手によって奇跡の勝利をおさめたNCRのレプリカだ。ZDM氏自らの手で全てに渡って改造され異様に軽量に仕上がっており、暴力的なエキゾーストノートも魅力。このガレージには他に大量のベベルDucati、Bimota、Laverda、4輪はLotus Elan Sprint等があり、まさに宝の山。場所はヒミツ。

果たして、5年ぶりに乗ったスリッパは最高だった。

Nacky
2010年4月11日



自己紹介
【F1スペシャリストから女性下着博士へ(笑)】

趣味は“バンドとバイク”という、昭和の不良高校生のようなパンクなジジィです。休日はバイクor自転車に乗るかイジるか、野外ライブをするしか過ごし方を知りません。よって、雨の休日は廃人です。

とにかく2つの車輪しかない不安定な乗り物が大好き。モーターサイクルやMTBでムチャ走りをしての生キズが絶えません。また、ギターやベース、ピアノなどの楽器を与えると制止されるまで弾き続け、自作のヘンテコな曲をその場で作りながら歌い続けます(本職はベース)。ジジィはジジィでも、“スーパージジィ”を目指して日夜努力中。若い女性からはイマいちモテないが、オバちゃんやガキんちょ、オカマに対してはいつも爆発的なパワーを発揮します。家庭や仲間うちでの呼び名は「人間に最も近いサル」。

自分のバンドのサイト↓です。
http://www.cyworld.jp/bluecolorunion
「サルは一体どんな音楽を創るんだ?」とご興味のある奇特な方、楽曲の試聴やダウンロードもできますので、是非覗いてみてください。アマチュアミュージシャンの方、コラボも大歓迎!アレンジもいたします。

こちら↓は自己紹介がわりです。アホ丸出しですが(笑)。
http://www.e-enesta.com/ore/flash15/fno282.htm

仕事では長年関わっていたHonda F1の仕事を辞し、イタリア車の広告制作を経て、現在は港区にある某広告代理店のクリエイティブディレクターとして、テレビCMやら広告やらを作っています。なんだか偉そうに聞こえるが、要は宣伝を作る上での何でも屋さんです。元来クルマ/バイク/レースのスペシャリストですが、今はなぜか女性下着のスペシャリスト。ご面倒な広告制作の仕事、よろずお引き受けいたしますのでご指名ください。

I'm OK, even if you give me a message in English,
and I'll certainly reply to you!
Thanx for your coming.

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