俺達のコラム
料理の鉄人


『料理の鉄人』って番組覚えてますか。1993年から1999年までフジテレビで放送されていた料理をテーマとしたバラエティ番組で終了してもう10年以上経っているんですね。

フレンチの鉄人は初代、石鍋裕 西麻布「クイーンアリス迎賓館」オーナーシェフ(行った事はありませんが…)二代目が 坂井宏行 渋谷「ラ・ロシェル」オーナーシェフ(同上)、中華の鉄人 陳建一 赤坂「四川飯店」総料理長。和の鉄人 初代、道場六三郎。そして出演者は美食アカデミー主宰の大げさな衣装が忘れられない鹿賀丈史、実況席 福井謙二、服部幸應(解説)、審査員 岸朝子他どうして審査員席に居るのか判らない政治家・俳優などなど。

当時はこの番組を楽しく見させて貰った思い出があります。
限られた時間内にその時の食材を使って絶妙な料理を作り審査を受け、大体は「鉄人」が勝つものの、挑戦者が勝ったりして、スリルもあり鉄人にも緊張感が感じられたりして楽しみな番組でした。

あれから10年あの番組はこちらオーストラリアでも夜のプライムタイムのTV番組で”Iron Chef”(「料理の鉄人」)という番組に変身しています。
変身という言葉がまさにぴったりの変身ぶりで、画面は日本の昔の番組のものですが、話は吹き替えで英語です。その上どうも“海外向けに後で別途作成した”と感じさせるような所があり、その“変な変身ぶり”が又面白みを増しています。

先日Iron Chefの放送の有った翌日オーストラリアの友人と話して居たら「昨日の晩Iron Chef見てたら日本人はあの鯉とか魚の口がパクパク言っている刺身を食べるの?口がパクパク言っているのを見てたら食べられなくならないの」という質問が飛んできました。
う〜んなるほど。
確かに普段生の魚を食べない国の人達にとっては「あんなの見て気持ち悪くないの?」という感想でしょうね。元々「刺身」とか「寿司」はNYやLondonをはじめとして世界中の都会で流行しているとは言え、それは都会に住む人達の食文化で、ここのオーストラリアの田舎の人達はまだまだ「刺身はちょっとだめ」「先日日本食レストランに行って食べたのは普通のステーキ」という人がまだ多いんです。

日本の割烹や料理屋では水槽に生きた魚を放し、お客の注文に応じて水槽からすくいあげて、竹で編んだザルかなんかに竹笹を敷いて魚を乗せ、ぴちぴち跳ねる様をお客に見せて「この最高に新鮮な食材をこれから料理します」とわざわざやってくれるのは高価なレストランで、日本では居酒屋や大衆酒場ましてやファミレスではそんな事はやってくれません。
日本人は水槽で鯛やヒラメが泳いでいるとそれだけで「美味そう」と考えますが、魚を中心にした食生活でないオーストラリアの田舎の人達にとっては水槽の魚=ナマ=口パクパク、なんていうのは「も〜だめ!」。だから上記の様な質問が飛んできたのは、もっともな話です。

一方ここのレストランや会社名で「〜トカゲ店」とか「ヤモリレストラン」なんていう名前は日常頻繁に見かけます。トカゲやヤモリは日本人にとっては共に爬虫類関係で出来れば家の中を歩き回っているのを見たくはない類のものです。
ここでは小さなヤモリは家の虫を食べてくれるとか、トカゲは精悍な顔つきをしていて古代からの生き残りで野性的でカッコいいとか、そういう感情を持っている様です。つまり日本人の感覚とはかけ離れた”良い・好きだ”という感覚をもっている様です。
大きな蜘蛛も毒クモでなければ家の壁に張り付いていても全く動じない友人もいます。(私はそんなのがいればその部屋に近づく事すらできません!)

オーストラリアの都会シドニー、メルボルン、ブリスベンなどは勿論都会の生活で日本の生活と大差はありませんが、田舎に行くと自然が一杯です。動物、ここではカンガルー、白鳥黒鳥、綺麗な水鳥各種が普通にいますしコアラも時として見る事があります。自然の中にいる動物をまじかに見れるのはそれだけで幸せと喜びを感じます。そして当然虫類もそれをたべるトカゲやヤモリも頻繁に見かけます。

ということで友人には「鯉とか魚の口がパクパク言っている刺身は“新鮮さ”の証拠なんだ。見慣れればなんてことはないよ。“あっ動いてる”って感じ。生きが良くて美味そうって思うんだ。
オーストラリアでも「ヤモリレストラン」とか爬虫類の名前を良く見るけど我々にとっては「ヤモリレストランなんて書いてあったら絶対行かないよ。結局生活環境や文化の違いで、善し悪しではないよね」と説明したら直ぐに納得していました。

さてオーストラリアで見るIron Chefが何故“どうも海外向けに後で別途作成したと感じさせるような所があるか”と言うと特に審査員です。製作費を大幅に削減させる為に出演して貰った様な俳優・女優・歌手の方々が審査員として出てるんです。昔は夜の通信販売なんかのTV番組に「以前活躍していたがもう芸能界では下降線となり、とうとう深夜の通信販売番組に登場し“えっ、そのハンドバックに時計もついて、その上財布までつけてたったの1万円ですか!」という芸能人が割合沢山いました。
そんな感じのする審査員の方々が登場し、久々に拝顔できる所が楽しさを倍増させてくれます。そう言えば10年前の当時は審査員が各々どういう味がしてどう感じるかを述べていましたが、最近では、TV番組の食べ歩きや旅先での食事の番組では何の芸があるのか判らない“芸能人”が「美味しい!」とだけ言うようになったのはいつからでしょうかね〜。



20010/3/20
著者: Sunny's English Square 佐藤明雄

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