俺達のコラム
教育熱(ベイタウンの教育・雑感)


ベイタウンの教育雑感

 本BBSで、最近教育関係の書き込みが増えていますね。
・ベイタウンの教育環境はどうなのか
というのが、親御さんの一大関心であるようですね。

 打瀬小という、溜昭代初代校長らが築いた特異で大きな遺産が注目を集め続けることはすばらしいと思っています(ハードの方も建築関係では非常に有名)。この学校に入れたいという方が集まり、教育熱が更に高まっているということがあります。
 が、どんな人が集まってくるかといえば、結局は他の郊外の新興住宅地とさほど差はないと考えます。ベイタウンだからと言って、選抜されて入居する訳ではありませんから、有意に特別な能力を持った子ばかりがいる訳でも、親や学校から見て優秀な子ばかりということもなく、いろんな子がいます。
 万が一、ベイタウンに住めば自分の子も優秀になるかのように思われているとすれば、それは大きな勘違いです。周囲の影響を受ける可能性がありますが、子供はその子なりにしか育ちません。

 ベイタウン以外もそうですが、埋め立て住宅地の自然の少なさは問題で、子供のうちにしかはぐくめない生の生命観が育ちにくいかもしれません。これからの時代を切り開くのに必要な地球規模の共生意識をどうやって我が子に根付かせるか、はたと悩んでしまいます。
 国際感覚も必要ですが、それを言い出すなら海外に留学させる気構えが必要です。
 ベイタウンの美点は、公立小・中学校が地元とそれなりに結びついていることでしょう。子供たちが大人たちに接する機会が多く、よい影響を受けうることでしょう。子供たちを育てようとする地域の意識が高いといえます。将来は地域が学校の運営に関わっていくコミュニティスクールへと進んでいくことになるのかもしれません。


教育熱高し。しかし……

 しかしながら、ベイタウンの美点とは別に、新興住宅地での教育熱は、親同士の相互作用の中で、目的がないままに「いい学校」進学へ駆り立てていく方向にすすんでいく傾向を感じることがあります。昨今の文科省の現実を見ない政策と相まって「中学受験」熱の加熱へとつながっている気がします。

 しかし、「いい学校」=大学進学率の高い学校 という単純な図式ができあがっていませんでしょうか。

 昨今の公立小で学力に不安があると塾にやれば、中学受験とセットになってしまいます。彼らは受験産業ですから、お金を使わせる方向に誘導しているのは否めません。文科省の現実を見ない政策と相まって、不安をあおって駆り立てていることはあるでしょう。
 有名私立に入れたからといって、親御さんが期待するような「いい大学」に入るための「教育」がなされるかといえばそうとも限らないようです。

 開成クラスの出身者に聞くと、学校では受験指導らしい指導を受けなかったといいます。帰国子女に人気のICUも同様とか。知り合いのICUにいった子は、テレビドラマの授業のシーンで、最初と最後にきちんと挨拶をしているのを見て「こんなのテレビの中だけのことだよね」といったそうです。それでもICUの良さがあります。
 進学実績がよくても、教育のポリシ−に欠けた学校もあります。
 私学の個性を知ることが重要です。有名私立中・高を大学への予備校と考えていると、とんでもない。学校をよく知らないと期待はずれということになります。

 大学進学に限れば、上位の学校になるほど学校は何もせず、生徒個人の能力に頼り、元々の能力が高いために自助努力でなんとかなっていることが多いようです。中堅クラスは自校の生き残りのために、熱心に指導しているところもあるようですが、生徒任せの学校もあり、学校によりけりです。
 実際のところ、学校の指導能力よりも「入学した時優秀な成績をとれる子だったから、大学入試にも対応できた」というのが現実です。だからこそ進学校は少しでもまじめで優秀な生徒を集めたがります。少数でも優秀な子が進学実績を作れば、その実績を見てまた優秀な子が入って来るという循環を狙っています。

 成績不振や何らかの問題があった生徒は、学校から出て行くことになるのが普通のようです。私学はシビアです。

 最近では、私立中高一貫校を大学への予備校ととらえ、過大な期待をして投資し、現実とのギャップが生じて親御さんの不満を生んでいる構造もあります。


私立一貫校なら安心?塾に行かずにすむ?

 一貫だといい教育を受けられるので塾がいらないとか、6年間を有効に使えるとか、高校受験がないから(親も子も)楽という話を聞きますが、その分つけが回ってくることもあるようです。
 いい私立中学に入れたら、みなトップクラスの大学に入れるというのは大きな勘違いで、入学した時の成績序列が、卒業するまでの間に激変することはありません。元々成績がよくて地道に頑張れる子がより「いい大学」に受かっていくのです。成績不振の子が学校の指導で激変したというケースはあまりありません。その逆はありますが。
 中高一貫では、入って間もなく意欲を失って、消費的な生活ばかりをするような子もそれなりにいます。特に、親が「中学にはいるまでは頑張れ!それからは自由にしていい」とかりたてているパターンは最悪です。
 公立中なら高校入試を頑張っている中3ぐらいが、もっとも意欲が下がります。だからといって、あまったエネルギーを何かの活動に向けている訳でもないようで、もったいないと思うことも。その学校の部活動等の盛んさも効いてきます。

 中高一貫校に行くことが本当によい結果を生むかどうかは、その子供の個性や親の接し方の影響を大きく受けます(学校との相性もふくめて)。
 自分でしっかり計画を立てて地道に学べる子は塾いらずで一流大学にも受かっていきます(こういう子は、どこに行ってもうまく行きますが)。が、易きに流れやすい子は6年間をうまく使えず、中高一貫校に向かないかもしれません。たとえ大学受験を前にしてしゃかりきに勉強しても、基礎が出来ていないのでどうにもならないこともあることです。そういう子は、高校受験でワンステップおいていた方がよかったということでしょう。

 また、大学への推薦受験の場合評定平均が効いてきますから、中高一貫でもペースを乱さず地道にまじめにやってきた子だけが推薦を受けることが出来ます。

 苦労して有名中学に入れたが成績がふるわず、結局不安になって塾に行かせている家庭が多く、お金ばかりがかかっている現実もあります。しかも、学校の課題と塾の勉強が両立できずますます伸びないことも。だったら、最初から公立+塾に行かせておいた方が長い通学時間で消耗することもなく、目の届く地元で地域の人に囲まれてしっかり育てられたということもあるもしょう。
 人間は、何かのプレッシャーがある時の方が他のことにもエネルギーを向けられることもあり、「中高一貫でのびのび」のつもりが大切な時期を無為に過ごさせてしまうこともあります。子供には適切な時期に「乗り越え経験」をたくさんさせた方が、人として強く立派に育つと考えます。高校受験もうまく行けばその一つになり得ます。
(高校受験では本人の意志が多少なりとも反映するのが、親の意志によるところが大きい中学受験と違うところでしょう。)

 中高一貫校にいれて学校に任せておけば、必ず子供にとってよい6年間になり、自動的に「いい大学」にはいれる訳ではありません。あえて中高一貫校にいかせるか、公立中にいかせるかは、どちらもメリット・デメリットがあり、熟慮が必要です。我が子の個性や家の考え方、家計、いろいろなものと相談してみてください。
 公立中という道がすべての子に用意されている以上、私立中は追加オプションに過ぎません。周りに流されて「うちも受験させなければいけない」と思いこんでしまうことは大いに問題があります。


どう道を選ぶか

 ところで、私立中学を受験させることが、妙な選民意識を生むことがあります。ほっておいてもみな公立中には入れる訳ですから、受験に対するモチベーションを創出するために、誰かが何かを言っているのでしょう。結果、公立中を見下げている子をよく見ます。その上で受験に失敗して公立に行くと、中学生にして自分は「ダメな人間」なんだと自ら烙印を押してしまうケースもあります。

 私立に行くということはその学校の目での選抜を受けるということですから、少なからず合格する生徒に偏りがあります。雑多な子がいる公立中に進み、多感な時期にいろいろな人と接する方が「人としてのバランス」を学べるのかもしれません。逆に、共学では男の子のからかいの標的になって苦しんでいたであろう子が、女子校だからこそ周りを気にすることもなく6年間自信を持っていきいきとしていることもあります。

 中高一貫の6年間を有効に使うには、生徒の生活が充実したものになるかどうかが大きいでしょう。中学受験をするなら、進学実績より、どんな校風で、どんな部活動が盛んで、設備や教員はどうかと言うことを重視した方が、子供の将来に影響があると思います。
 自分の出身校で子供を学ばせたいとか、キリスト教教育を受けさせたいとか、あの先生の指導を受けさせたいとか、あの伝統ある○○部で活躍させたいとか、明確な目的意識がないなら、単なる偏差値序列で学校選びをするほかなくなってしまいます。それで本当にいいのかどうか、よく考えて頂きたいです。

 せっかくお金をかけて受験準備をしてきたのだから、とにかくひっかかった私立中学に入れさせるというのは一番問題があることだと思います。お金ばかりかかり、子供のモチベーションが保てずに成績もふるわず、学校生活もつまらないものになるかもしれません。逆転を狙って高校でも受験というケースも中堅以下ではあることですが、このケースでは完全に塾頼みになります。

 この学校だから入れたいという明確な意志を持ち、それがかなわないなら公立中へ、という英断というか、心の余裕があってよいのではないかと思います。たとえ受からなくて公立に進んだ時のしこりが残りにくいでしょう。
 たとえば、地元の学校にこだわって、昭和秀英や渋幕(←結構個性の異なる学校です)か打瀬中という考え方も全く悪くありません(高校受験で再チャレンジも出来ますし)。


 長くなりましたが、マスコミや人、塾等のいうことに流されず、我が子をよく見て、この子に一番合っている道は何なのか、どんな経験をさせてあげるのがいいのか、よくみて考えて欲しい、というのが私の願いです。

 教育者の役割は、子供のもっているものを伸ばすことです。
 もっていないものを押しつけることは出来ません。社会的に期待される教養を持たせることが一つの限界です。

 子供に本当に親身になれるのはその親だけです。
 我が子をよく見て育ててください。他人任せにせず。
 お願いします。


2004/12/27
"教育者"(ハンドルネーム)・・・言いたい放題BBSよりの転載



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