「俺たち2」管理人による遠距離通勤マガジン

ベイタウンは個性的な方々が住んでいて、おもしろい。住んでから10年以上経つのにまったく飽きないのは、素晴しい方々とたくさん色々なことをお話できるからである。Kさんは、私が住んですぐくらいに存じ上げていて、挨拶程度の関係だったが、たくさん話をさせて頂いたのはごくごく最近のことである。(2006/4/6)
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明るく、楽しく、しかし、壮絶な人生を送っているKさん
自衛隊航空機のパイロットだったKさん


先日、ベイタウンの知人のKさん宅に突然お邪魔することになった。茂野の麺を買ってくれたので、お届けに行ったら、入れ、と言われたので、ずうずうしく部屋に入ったのだ。Kさんは、ベイタウンの中では超有名人。だから、イニシャルで伏字にしても、これから書く内容で、「なんだ、Kさんか。」とすぐに分かってしまう方も多い。親分的な、というと誤解があるが、存在感のある、行動力のある人である。

Kさんのお宅は、南向きの角部屋で、リビングが広い。夏には、ベランダできゅーっと一杯できるいい感じ。リビングに通された私に、Kさんは酒(日本酒の熱燗)を入れてくれた。いやいや、何もお構いなく、と言いつつ、酒は嫌いじゃないので、それじゃ、ちょっとだけ、ってなわけでゴチになることにした。Kさんのご家族は出掛けていた。

実は、Kさんと私は始めて二人だけで飲んだ。1〜2ヶ月前にも例のネパール料理店で深夜まで飲んだのだが、そのときは、周囲に数人だけど人がいた。だから、今日(4月6日)、短い間だったけれど、たっぷりと話をすることが出来た。話をするだけなら、過去に何度か機会があった。でも、今日の話は密度が濃かった。Kさんとの話は楽しい。色々な経験をされている大先輩だから、私のまったく知らない世界のことを教えてくれる。

例えば、Kさんは若いときに自衛隊の対戦哨戒機のパイロットだった。若くして、エリートの座にいた。対戦哨戒機というのは、大きな航空機で、部下10人近い搭乗員がいて、リーダー件、パイロットというのは、やりがいもあるが、非常に多くのプレッシャーがかかるのである。なんせ、10人の部下の命を預かっているのである。

自衛隊というと、今ではイラクに派遣されていて、危険を伴っているが、かつては、訓練だけで、実際に何も危険が無く、つまり、まさか死ぬようなことは絶対にない、なんて、思われているかもしれないが、Kさんによると、まったくの誤解だそうだ。Kさんも何度か死ぬような目に遭っている。ミグに追いかけられたこともあるらしい。

対戦哨戒機は、国境すれすれの所を監視して飛んでいる。領海侵犯や、領空侵犯などに備えて、警戒しているのだ。そして、万が一、国境の中に入ってくる外国船には警告をし、外に追い出すこともしているのである。

だが、警告といっても言うことをすんなり聞いてくれるわけではない。時には威嚇しないとならないときがある。時には相手が射撃してくることも、またミサイルを発射してくることもある。Kさんによると、自衛隊といえども、最前線は実戦なのである。

「ロックオン」という言葉を映画などで目にしたり耳にしたりしたことがあるだろう。相手のミサイル発射の為のレーダーに捉えられたということで、いつでも発射されることである。ロックオンをされたことは、相手のレーダーを捉え(周波数に同調し)、その電波を音声化する装置で把握できる。ロックオンされたことを音で知るのだそうだ。それは、非常に不快な音で、「び〜〜〜っ」という感じ、とKさんは身振り手振りで再現してくれた。

当然、Kさんの操縦しているときもロックオンされた経験があるからそういう話が出来るわけで、そんな経験をされている方がご近所に住まわれていることだけでも、すげえな、と思う。段々、戦争を経験する人が少なくなってきている。しかし、今でも戦争は確実にあって、どこかで生死をかけて闘っている人がいるのだ。

一度Kさんは実際に相手に打たれたことがあるらしい。それをかわすのがパイロットの腕の見せ所。見事、かわしたから今でも生きているのだが、そのとき、どんなことに対しても冷静で、ひるまないように見えるKさんは、おしっこを漏らしていたらしい。あ、この話は内緒だっけ。いや、しかし、誰でもそんな状況になれば、そうなってしまうだろう。私なんか、脱糞するんじゃないだろうか。食事中の方々、すみません。って、食事中にこんな拙文なんか読まないか。(笑)

ところで、ミサイルには、相手の熱源だったり音だったりをキャッチして追随する機能を持っている。そんなのをかわすとこが出来るのだろうか。そのあたりをKさんに訊ねると、笑いながら、「ミサイルに追いかけられたときの操縦士のしなきゃならないことは、きっちりと指導されていますし、訓練されているのです。」と答える。なんか神業的なんだけど、海の上だったら、水面すれすれに飛び、どんどん、爆雷などを撒く。すると、それがどんどん爆破するので、ミサイルはその熱源に向かってゆくし、爆破したときに発生する水しぶきが相手(ミサイル)のレーダーを狂わす。などなど、色々な方法があるらしい。残念ながら、美味しい日本酒がどんどんお代わりしてゆくうちに、忘れてしまった。また、教えてください。(笑)

Kさんの上官には、第二次世界大戦に関わった方々もたくさんいるらしい。話は沖縄決戦の話になり、そして、いつしか、掃海艇の話になった。掃海艇というのは、海の中に設置された機雷を爆破させて安全に航行できるようにする役目を負った船である。沖縄で戦い、そして戦後の日本近海にあった無数の機雷を長い年月をかけて全て除去したのはKさんの上官の〇〇さんである。(お名前をお聞きしたけど、失念しました。すみません。)

「日本が何故、戦争に負けたか知ってますか?」とKさんが私に問題を出した。む、む、なんでだろう。理由はたくさんあるから答えられないのだが、と、思っていたら、すぐに、「私は機雷にやられたと思うんですよ。日本の海は機雷だらけで、安全に航行できなくなるので、海外との物資とのやりとりができなくなる。それに、いざ出撃ということが出来ないので、もう闘えないということなのである。結果的には原爆が投下され、闘う気力も失せたのだが、それ以前に外に出られなくなっていたのです。」と、Kさんが答えてくれた。

更に、機雷はとげとげの触覚みたいなものがあって、というのは、凄く古い知識であって、実は第二次大戦の時には既にハイブリッド式だったのだという。音や圧力の変化など、いくつかの要素を絡ませて爆発させるので、誤爆が無いのだそうだ。加えてタイマー式のものもあり、掃海艇が大きなダミーの船(実際には鉄板のようなもの)を機雷の仕掛けてある水面に走らせ爆破させるのだが、そのときにはなにも反応しなくて、「あ、大丈夫じゃん」と思わせておいて、何度目かの航行があって初めて爆破する、という仕掛けも出来るらしい。ということなので、掃海艇の任務は重要かつ、大変危険なのである。

Kさんは現在、現役のジャンボジェットの機長である。自衛隊でも指導者的立場だったが、退官し、JALに再就職した。自衛隊で培った経験や技術を生かし、多くの人の命を預かる非常に大変な仕事である。だが、昨年からフライトをしていない。いや、できないのだ。なぜか。それは、彼が癌であるからだ。癌は甲状腺で見つかった。昨年には、手術して、癌細胞を除去したのだが、色々な部分に転移し、医者からも治らないと言われたらしい。

その話は、以前、Kさんと公園でお会いしたときに聞かされ、非常にショックであった。もちろん、昨年は本人も絶望の崖っぷちにいた。ところが、今、言わなければまったく癌だとは分からないくらい、へたすると健康な人よりも元気で、酒もがんがん飲んでいるし、テニスもやるし、街の活動もやっている。いったいどうなっているのか。癌が治ったわけではないのだが、あるお医者さんのお陰で快方に向かっているのだそうだ。

このあたりの話になるとまた長くなりそうなので、今回はここで終わりにしておく。Kさん、お酒ご馳走さまでした。またお話を聞かせてください。

(注:筆者は結構酔っ払ってましたので、お聞きしたことを正確に表現できないばかりか、誤った解釈をしている場合もある。そこんところ、よろしく。って、古い言い回しだなあ。)

2006/4/6

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