ベイタウン唯一の科学研究機関
- 第15話 -   出演:ゲソ博士 聞き手:助手のザクソン


世紀の大発明!

ゲソ:
ザクソン君。遂に画期的なものを発明したよ。
ザク:
お、博士、やりましたね。で、どういうものですか。
ゲソ:
「バーチャル・デート」というソフトウェアだ。
ザク:
バーチャルデート??なんですか、それ?
ゲソ:

うむ。忙しくて、なかなかデートできない若い二人に、ネット上でたっぷりとデートを愉しんでもらおうというものだ。これは売れるぞ。
ザク:
ふーん。ネット上でデートですか?なんかつまらない感じですね。
ゲソ:
ばかもん。なにがつまらないだ。バーチャルといっても、ちゃんと二人の共通体験が出来るのだぞ。メニューも色々ある。お好みの場所、お好みのスタイルが色々選べるのだ。
ザク:
でも、本当に会えるわけでもないんでしょ。いくら好きな彼女がいてもネット上でしか会えないなんて、つまらない。
ゲソ:

ザクソン君。君は遅れているな。昨今の若者はだよ。ケータイのメールでお互いの愛を確かめている。へたすると、会ってもメールで会話しとるんじゃよ。あほらしいがな。
ザク:
なるほど、即ち、実際に会うくらいなら、却ってネット上のほうが燃えるというわけですな。
ゲソ:
まあな。着眼点は間違ってないだろう?今や、ネットバンキング、ネットショッピングも出来るし、見知らぬ奴と出会ってチャットしたり、ゲームの対戦もしたり、へたすると、一日中どこへも行かずに過ごせるわけだ。だんだんモノグサになってゆく。それだったら、デートだって、自宅のPCの前に座ったままやればよろしい。
ザク:
えらく不健康的じゃないですか?
ゲソ:
くっくっく。それだけじゃないぞ。バーチャルセックスも出来る。
ザク:
それって、テレフォンセックスみたいじゃないですか。
ゲソ:
なんだっていいさ。ネット上で自分のキャラと相手のキャラを絡ませるんだ。ほれ、これを見ろ。えらく立体的だろうが。声だって出るぞ。
ザク:
映像と音声だったら、テレビドラマを見ているのと同じじゃないですか。
ゲソ:
テレビドラマも映画も一種の疑似体験をするってことで、まあ、似ているといえば、似てるな。だがな、これは自分でオペレートするのだ。しかも、相手もいるから、そう簡単にうまくゆかない。思うとおりにいかないのが、難しいのだ。ほれ、そう言ってるうちに平手打ちされた。
ザク:
逆にストレスが溜りそうですが。
ゲソ:
ゆくゆくは、例えば、ネット上のキャラに感覚器官を付けて、それをオペレートする人間、つまり君だとすると、君の感じる部分に反応するようなインターフェイスを開発する。
ザク:
おっしゃることがわかりませんが。
ゲソ:
つまり、ネット上の君を彼女が愛撫する。例えば、首筋に彼女がキスをする。その感覚がそっくり君の身体上にも伝わる。ひひひ。例えば、あそこだって。
ザク:
やめてください。そんな馬鹿な。
ゲソ:
馬鹿とはなんだ。馬鹿とは。いずれそういう世の中になるのだ。人間は家の中に閉じ籠もってどこにも行かなくなる。足はいずれ退化して、きっとナメクジのように這って歩くようになるのだ。
ザク:
SFみたいですな。
ゲソ:

さよう。そのような世界にならないことを願っている。だがな、確実に人類はへんな方向に科学を応用し始めている。便利さを追及し、不自由さを手放す。不便なものに本来の人間らしさがあることを忘れてしまっている。今回の私の発明がまったく売れないことを祈ってるよ。
ザク:
そう願いたいです。

2004/3/30 うすらば研究所 Oretachi.jp

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ドクター・ゲソ
1957年生まれ。東京○○大学卒、三流企業に勤める傍ら、「科学やってみんべよー。」というコンセプトで独自に科学の研究を重ねる。2000年、自らを科学者と名乗り独立、くだらない発明などをするが、飽きちゃったので、現在執筆活動に専念する。ベイタウン在住。大の音楽ファンで、プログレロックが大好き。磯辺の「魚よし」では必ずゲソを注文する。

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