ベイタウン唯一の科学研究機関
- 第14話 -   出演:ゲソ博士 ゲスト:ナゲ博士 聞き手:助手のザクソン


新春ラーメン対談
ナゲ博士が登場!

ザク:博士。今年2回目の「うすらば研究所」ですが、改めて、あけましておめでとうございます。本年も当研究所がますます発展しますように。よろしくお願いします。
ゲソ:正月だからといって、めでたくもないのだが、とにかく何とか年を越したということはメデタイのだろうな。ザクソン君、今年も頼むよ。
ザク:はい。2004年はどんな年になるのでしょうね。
ゲソ:まだまだ不景気が続いてるからな。不景気ったって、こう長いとこれが普通に感じるから不思議なもんよ。
ザク:突然ですが、今日のテーマは「ラーメン」です。比較的値段が安くて美味しいというのが、不景気の時代にマッチしているのかもしれませんが、ブームは衰えることを知りません。しかし、博士はどちらかと言えば、そば好きなんですよね。
ゲソ:いかにも。だが、ラーメンだって食うさ。ラーメンはだな、一時ハマってたな。なんせ気軽に食えて、しかも美味い。
ザク:ラーメンを小宇宙に例える人もいますね。どんぶりの中の麺とスープ、そして具。これらの絶妙なバランスがそう言わせるのだそうです。
ゲソ:なにを大げさな。宇宙は大げさだろう。確かに一杯のどんぶりの中で麺も野菜も肉もスープもあるっていうのは画期的な食い物だな。ラーメンの歴史をよく理解していないが、雑炊というものがあったればこそ、日本人にこれだけ愛されたのだろうな。パンの文化じゃ、スープと一緒に穀類を食べることに物凄い抵抗があるだろうな。
ザク:スープパスタというものもありますが、アメリカ辺りだと博士のおっしゃったようにずっとパンとスープだったんでしょうね。今では欧米でもラーメンはそう珍しい食べ物ではなくなったようですが。
ゲソ:結局美味いもんは美味いのだ。
ザク:そうそう、今日はですね、ゲストをお呼びしてるのです。
ゲソ:なに?誰だ。
ザク:はい。ラーメン談議には是非呼んでほしいとリクエストがあったもので、それでは、ナゲ博士、こちらにどうぞ。
ゲソ:なんだ。ナゲ博士か。
ザク:あ、ナゲ博士をご存知なのですか?
ナゲ:どうも、どうも、ゲソ博士。ナゲです。
ゲソ:よく来てくださいました。ゲソです。
ザク:顔見知りだったんですね。
ゲソ:いや、会うのは初めてだよ。まあ、ナゲ博士が音楽に造詣が深いということで、存じあげていたのだがね。
ナゲ:いやいや博士の音楽性にはかないませんよ。それより、いつも楽しみにしてます。うすらば研究所。
ゲソ:有難う。ナゲ博士にお褒めにあずかり光栄です。
ザク:さて、役者が揃ったところで、何から話ましょう。まず、お好きなラーメンのタイプを言って頂きましょうか。
ゲソ:ナゲ博士。お先にどうぞ。
ナゲ:そうですねえ。どっちかっていうと「とんこつ系」ですかね。
ゲソ:とんこつねえ。最近だと横浜の「家系」が強いね。もともと本場は博多だったのだがね。
ナゲ:友人のぶよんちょさんは九州の出身で、詳しいですよ。
ゲソ:私も九州ラーメンは大好きだった。あの白濁したスープはたまらんな。東京では、「丸金ラーメン」とか、「一風堂」によく行ったな。だが、今じゃあっさり醤油が気に入ってる。年齢のせいかもしれんがな。
ザク:ナゲ博士は九州ラーメン、ゲソ博士は東京ラーメンという感じですね。
ゲソ:どちらかといえば、そうだろうな。
ナゲ:ただね、当初はもちろん九州ですが、ちょっと好みの傾向が変わってきましね、白濁してなくとも背脂がばっちり入っていて、ギトギトのラーメンが好きですね。九州のタイプとはちょっと異なる。
ゲソ:いわゆる長浜ラーメンは私も目が無くて。あの辺りに行くと臭いが体を引っ張ってゆく。なつかしいな。しかし、確かにナゲ博士が言うところの九州ラーメンと最近流行りのギトギトしたトンコツ系のラーメンは明かに違うな。
ナゲ:神宮の「ホープ軒」とか、その流れを汲む恵比寿の「香月」がその流行を作ったのでしょうね。
ゲソ:そうかもしれんな。かつては荻窪の「春木屋」あたりが東京のラーメンで有名どころだったのだがな。徐々に流行のスポットが変化している。「春木屋」が流行っていた時と同じ頃の代表的な東池袋の「大勝軒」は今でもよくテレビなどに紹介されているが。
ナゲ:博士。池袋といえば、最近アタマに来ているのがあの婦女暴行の店長がいたラーメン屋。なんなんですかねえ。あれは。
ゲソ:ナゲ博士もあの事件に怒っておいでのようだから私も言わせてもらうが、最近のラーメン業界はなってない。ちょっと美味いラーメンを作れるからって文化人気取りだ。あの佐野とかいう奴はなんだ。ああいうのがマスコミでのさばってるから、勘違いして偉そうにしているラーメン屋が出てくる。池袋の事件だって、文化人気取りのラーメン屋が増えたことに全く関係無いということではないぞ。
ザク:しかし、美味いラーメンだったら文化人気取りだろうが、芸能人気取りであってもいいんじゃないですか?
ゲソ:美味いというのは基本だ。できて当然。できなきゃ淘汰される。だがな、客商売をやっている以上、そこに驕り高ぶりがあっては断じてならないと私は思うがね。如何だろうか。
ナゲ:博士に同感です。弟子をとって精神修行というイジメまがいをやってるし。精神もそりゃ大事だけど、行き過ぎてないかと。常にカメラを意識していて、何が精神修行だって思いますよね。
ゲソ:その通り。とにかく、客にウマイものを食わせる、それだけに集中すればいいんだ。マスコミもショーアップし過ぎだ。資本家も何を勘違いしてるのか、ラーメン屋を一堂に集めたばかでかい施設を作りおって。
ザク:でも、ラーメン博物館はなかなかいいですよ。
ゲソ:いいかもしれんが、日本のラーメン文化を変に歪めてしまうような気がする。だからこそ私は昔ながらの流儀で地道にやっているラーメン屋が好きなのだ。試しに、有名店で食っても、もちろんそりゃウマイのだが、場末の目立たないところにあるラーメン屋で食ってみろ。そりゃ美味なラーメンに出会えるぞ。それに町のラーメン屋は値段も安い。ラーメンはせいぜい500円までだな。800円なんてとんでもない。安くてウマイということを度外視した時点でもうラーメンではない。
ナゲ:おっしゃるとおり!600円までだったら食ってもいい。
ゲソ:そういうことだ。究極のラーメンなどと言って1000円も取るくらいなら500円のそこそこのやつを2杯食ったほうがいい。腹いっぱいになるしな。
ザク:でも、安いラーメンもちゃんとメニューにあって、それでいて高いラーメンもメニューにあるというのはどうですか?ちゃんと値段分の手間暇かけて食材にも凝っているんだったら許しませんか?
ナゲ:そりゃアリだな。
ゲソ:高いラーメンはロットも少ないからそれ用のスープも用意しなきゃなんないし、金がかかるのは分かる。だから本当にその価値があればそれでいいのだが、基準となる普通のラーメンが高いというのは許されないな。値段の差が味にきちんと反映されてないのに、高いからウマイという錯覚を起こさせているのではないか?これウマイだろ!?だなんて、誇大広告かあるいは押し売りだ。味の良し悪しの評価をするのは客なのだ。いくら店主の思い入れがあろうともな。
ナゲ:ブランド料ってのもあるんじゃないっすか。前出の佐野某というのも一発売れたからって有頂天になって。あいつが作れば無条件でウマイってわけじゃないと思うんですが。まあ、それなりのノウハウは持ってるんで、そこそこはイケるんでしょうけどね。
ゲソ:何の業界でも一発名を売りゃ、それなりのブランドが確立されるっちゅうわけだな。紅白に一度出て、その後なーんにもヒットしてないのに、地方の年寄りには大いにチヤホヤされている演歌歌手みたいにな。しかし、そろそろ消費者も甘くないぞ。
ナゲ:でしょうね。ドキュメントタッチのテレビにしても、ヤラセかそうでないかというのを見抜く術も視聴者はちゃんと持ってます。テレビチャンピョンのラーメン決定戦なんて、どんぶりの底だけ見て、どこの店かを簡単に当ててしまうとか、それが仮に絶対にインチキじゃないとしても、我々は妙に冷めた目で見ていますよね。作り手がいくら驚かそうったって、そうはゆかない。逆に目的地までマラソンさせて、ラーメンを食わすなんて競技は笑わせる意図だったら、まったく勘違いしてるし、ナレーションを大げさにしてリアル感を出そうったって、額面通りには受け取れない。
ゲソ:私なぞ、プロジェクトXすらお笑い番組じゃないのかと疑ってしまう時があるよ。
ザク:それ、物凄く分かります。

チェーン店もなかなか捨てたもんじゃない
ゲソ:
それにしても昨今のラーメン業界に対してのマスコミの影響力っちゅうか功罪は大きいわけだ。
ザク:全国各地にご当地ラーメンが出来てしまいましたしね。私も喜多方ラーメンがにわかに脚光を浴びた時は、わざわざ現地まで食べに行きましたよ。
ゲソ:どうだった?案外まずいだろ?名物にうまいもの無し、というのを私は嫌というほど経験しておる。
ザク:いや、うまかったですよ。縮れ麺って好きなんですよ。邪道かもしれませんが、チェーン店の「ちりめん亭」って好きなんですよね。あっさりした鳥ガラスープも美味しいし。
ゲソ:そうそう。チェーン店というのは侮れないぞ。純粋にチェーンかどうか知らんが、千葉や埼玉でよく見掛ける「ラーメンショップ」はよく行ったな。店によって味が違うんだ。
ナゲ:バーミヤンはどうでしょう。
ザク:あ、バーミヤンラーメンってウマイですよね。
ゲソ:まあまあだな。あの値段でいい味出してる。
ナゲ:「揚州商人」は?ベイタウンでは人気が高い。
ゲソ:あっさりしてウマイな。麺もそこそこだ。
ザク:かつて私は稲毛の「元気一杯」によく行ってました。
ゲソ:ドラの鳴るやつだな。確かに私もかつてはファンだった。今でもたまに行くよ。
ザク:げ?「元気一杯」はギトギトじゃないっすか。
ゲソ:そう。たまにだがな。
ザク:ぶよさんが14号の旧道にある「ハルピン飯店」のラーメンがウマイって言ってましたが、あそこはどうです?実はまだ行ったことがないんです。
ゲソ:私も行ったことがないが、興味があるな。
ナゲ:どうです?近いうちにご一緒しましょう。
ゲソ:是非。
ナゲ:がんこなラーメン屋は嫌ですが、そこは大丈夫でしょうね。
ゲソ:私もそういうのは嫌だな。がんこというより、客に厳しい店。いくら味が良くても、接客がちゃんとできる店がいい。もちろん、まずいのは論外だが。接客がちゃんと出来て、そこそこウマイということではチェーン店もまんざらではないぞ。
ナゲ:がんこな店も本来はあってもいいんでしょうが、「まず、スープから飲め」とか、「私語厳禁」などとおかど違いのこと言ってる店がありますよね。なに考えてるんだと思いますよ。でも、そんな店に通うバカもいるんで、それをとやかくは言えないのでしょうけど。
ザク:がんこなおやじに叱ってもらいたいんでしょうか。私がゲソ博士に叱られているように。
ゲソ:それは余計だ。繰り返すが、ラーメン屋は文化人である以前に客商売だということを自覚せんとな。そういう意味ではマニュアルの接客しかできんチェーン店のほうがよほどいいっちゅうことだな。
ザク:チェーン店を肯定して頂くと嬉しいです。実は私、チェーン店派です。最近はバーミヤンもそうですが、「幸楽苑」によく行きますよ。醤油、塩、味噌などの4つの味がそれぞれ390円で楽しめる。これ大きいです。サイドメニューのミニ唐揚げ丼なんて180円ですよ。
ナゲ:その店って新習志野の駅前にもありますね。確か上場企業ですよ。
ゲソ:ほう、ラーメン屋で上場というのはたいしたもんだな。
ザク:それから、やはりチェーンですが、「千成ラーメン」とか、「とん太」はどうでしょう。
ゲソ:「千成」も「とん太」も同じ系列だったと思うが、「千成」はウマイ。カリカリのニンニクがトッピングされていて、独特の香ばしい味だな。麺も風味があっていい。「とん太」はどうだったけな。以前行った時の心象は良くなかったので、それ以来行ってない。
ザク:かつて、千葉の寒川ってところにあった「車屋ラーメン」が美味かったんですが、いつのまにか無くなって、「味仙人」というラーメン屋に生まれ変わってましたね。でもそこも潰れた。あの辺りはさすがに交通の要所なんで、ラーメン屋は多いんですが、最近は素通りです。
ゲソ:激戦区だな。
ザク:行徳辺りも激戦区がありますよ。浦安行徳バイパスの通り沿いはずらーっとラーメン屋が並んでいて、勝手にラーメン街道と名付けてました。美味しい店もまずい店も色々ありましたけど、よく行きましたよ。
ゲソ:行徳界隈はよく知らんな。ただ、かなり以前だが、「どさんこ」に行ったかな。「どさん娘」はかつては全国のどこにでもあるチェーンだったのだが、いつのまにか極端に少なくなってしまったな。あの味噌ラーメンは好きだったのにな。コーンやバターをトッピングしたり、カレーラーメンもうまかった。
ザク:車屋ラーメンも全国チェーンでしたよね。本部は潰れちゃいましたけど。餃子の無料サービスやご飯が付いてくるなど、結構安くてお腹いっぱいになったのになあ。スタミナラーメンなんて好きでしたよ。
ナゲ:「花月」というチェーンもありますね。
ザク:うーん。残念ながら食べたことがありません。
ゲソ:東京の昔ながらの煮干とか鳥ガラの醤油スープに、チャーシュー、ナルト、ほうれん草、海苔がトッピングされたやつが食べられる店は少なくなったな。
ザク:ラーメンに関しては西高東低ですね。、京都の「王将」とか「天下一」がかなり関東に出店してますよね。
ゲソ:京都というと、「あっさり」というイメージがあるが、ラーメンに関しては大間違い。ぎとぎとラーメンの本場だな。「天下一」もそうだが、「横綱」も凄いな。ただなあ、「王将」の餃子は評価するが、ラーメンはイマイチだな。
ザク:そうそう。忘れてましたが、博多の「ふくちゃん」の存在。
ゲソ:「ふくちゃん」は、博多のラーメンを関東に知らしめたという意味では、インスタントラーメンの「うまかっちゃん」とともに、功労者なのだが、今では「リンガーハット」のような感じになってしまったな。私はリンガーハットは好きなんだがな。
ナゲ:日本のスタンダードだ、という意味ですよね。長崎の人間も「ちゃんぽん」は「リンガーハット」でしか食ったことない、って言ってましたよ。
ゲソ:日本全国標準化したという感じだな。平たく言えば、「信州そば」は日本どこでも食えるが、地元で特に好んで食べられているというわけじゃない。
ザク:札幌ラーメンも旭川ラーメンも東京ラーメンも尾道ラーメンも地元である必然性が無くなってしまったということでしょうね。
ナゲ:ゲソ博士のおっしゃるマスコミというか、メディアの功罪なんでしょうね。
ゲソ:そうはいっても、有名無実のラーメン屋の化けの皮はいつか剥がれるだろうから、放っておいてもいいかもしれんがね。
ナゲ:結論じみてて申し訳ないんだけど、我々3人でもこれだけ盛り上がって喋れるということは、やはりラーメンはなんだかんだ言っても日本人には切っても切れない食文化なんですな。
ザク:ラーメンに関するいわゆるグルメ番組も、書籍も数ありますしねえ。
ゲソ:ラーメンブームはまだまだ続くってわけだな。
ナゲ:しかし、ラーメンの話をしていると、腹へってきますね。
ゲソ:よし。じゃあ、ラーメンでも食いに行くか。もちろん、ザクソン君のおごりでな。
ザク:そりゃないですよ。あ、そうだ。茂野製麺の「担々麺」でも作りますか?一応、「俺達のホームページ」のスポンサーさんなので、敬意を表して。
ゲソ:なんだ、即席か。
ザク:いいえ。即席じゃないですよ。一袋100円ですが、腰のある麺と生みそを使ったぴりっしたスープは本物の味です。
ナゲ:それは本当です。ゲソ博士もきっと納得してもらえますよ。
ゲソ:麺はどんな感じだね。私が好きなのは「都一」(千葉市にある製麺会社)の縮れタイプなのだが。
ナゲ:ストレートです。手折りなので、コンパクトなのですが。
ゲソ:よかろう。すぐに調理をしたまえ。
ザク:分かりました。今日は両博士のために真剣にお作りいたします。
ナゲ:よろしくね。
ゲソ:手を抜くでないぞ。それから、私は2人前だからな。くれぐれも2人前頼むぞ。
ザク:はいはい。仕方無いですね。ほんと、食いしん坊なんだから。
ナゲ:あ、私も2人前で。

2004/1/8 うすらば研究所 Oretachi.jp

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ドクター・ゲソ
1957年生まれ。東京○○大学卒、三流企業に勤める傍ら、「科学やってみんべよー。」というコンセプトで独自に科学の研究を重ねる。2000年、自らを科学者と名乗り独立、くだらない発明などをするが、飽きちゃったので、現在執筆活動に専念する。ベイタウン在住。大の音楽ファンで、プログレロックが大好き。磯辺の「魚よし」では必ずゲソを注文する。

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