ベイタウン唯一の科学研究機関
- 第11話 -   出演:ゲソ博士 聞き手:助手のザクソン



アンプって、どうして音が大きくなるの?

ザク:博士先日はどうも!
ゲソ:ああ、ラオックスに一緒に行ったことだね。私が同行したことで何か良いことはあったかな?
ザク:5.1チャンネルのAVアンプを値切って買えたことと、無線LANの構築を考えていたのですが、いろいろアドバイスを頂き、これでかなり前向きに導入することになりました。有難うございました。
ゲソ:私も帰りにジャイネパールで新メニューのカレーうどんをおごってもらったし、こういうお誘いはいつでもOKだよ、ザクソン君。
ザク:是非またお願いします。それにしても、博士、朝晩冷え込むようになりましたね。
ゲソ:なんだ取ってつけたような展開じゃないか。
ザク:すみません。そろそろ本題に入ります。実は前回に続き、また私のふとした疑問なんですが。
ゲソ:今度はどんなジャンルだね?
ザク:いやあ、アンプの話なのですが、どうして音って大きくなるのですか?
ゲソ:えらく漠然としてるな。アンプ即ち増幅器の原理が知りたいのかね?
ザク:そういうことですかね。
ゲソ:単純に言えば物凄い簡単な原理だ。
ザク:どういうことですか?
ゲソ:例えば、遠くで誰かが何か君に伝えようとする。そいつは、どうする?普通に話していたんじゃ、君に声が届かない。
ザク:大きな声を出すのでしょう?
ゲソ:その通り。これがアンプの正体だ。以上、オシマイっ!



ザク:ちょ、ちょっと待ってください。音源そのもののボリュームが上がれば、そりゃ当然大きな音になりますよ。
ゲソ:そりゃそうだわな。しかし、厳密に言えば声帯が音源で、その周囲にある機関、つまり喉とか、共鳴させるボディが増幅器、すなわち人間の体そのものがアンプなのだがな。アンプの原理としては振幅を増大するわけだ。音、まあ信号といってもいいわけなのだが、これを大きくする。そもそも音というのは空気の振動だということは分かるな?
ザク:ええ、そのくらいは分かりますよ。空気の無いところでは音も聞こえない。
ゲソ:そういうこったな。ではその空気の振動をより大きくすることを考える。正確には振幅を大きくするという。いったいどんな方法で大きくする?
ザク:そうですね。例えば、メガホンを使うとかですかね。
ゲソ:メガホンね。音に指向性を持たせて、特定の範囲だけの音圧を上げてやるということだな。本来のアンプというわけではないが、それでも昔の蓄音機の原理だ。他には?
ザク:他にですか?うーん、考えつきません。
ゲソ:じゃあ、例えば楽器で言えば、ギターだ。ギターの胴体が無ければ、弦をつま弾く音なんて、とても小さな音だろ?
ザク:はい、確かに。
ゲソ:それだ。要するに共鳴させればいいわけだ。
ザク:共鳴ですか?
ゲソ:そう共鳴させることによって音は増大する。音叉を知ってるだろ?
ザク:ぽーんと鳴るやつですよね。
ゲソ:うむ。もっといい表現が出来ないのかね。
ザク:すみません。
ゲソ:指で弾くと音がする。あるいは、軽くどこかにぶつけても鳴るな。音はどうだ。でかいか?小さいか?そうだろ。音はあまり大きくない。これをだ、専用の共鳴ボックスに押し当てる。これだけででかくなる。一番下の丸いところをだぞ。」
ザク:そうなのですか?
ゲソ:そんなの幼稚園に通ってるこどもだって分かるぞ。君はやったことが無いのかね。まあ、専用のボックスが無くても、コタツ板でも、そうだな、空瓶に押し当ててもだな、音は大きくなるのだ。
ザク:ひょっとして、ギターに押し当て調弦するときも同じこととですね。
ゲソ:面白いことがある。お寺の鐘がゴーンと鳴る。
ザク:ひゅー、どろどろどろ。
ゲソ:幽霊じゃないのだ。ゴーンとなると、かなり遠くまで届くんだなこれが。すると、遠く離れた寺の鐘も同じ音で鳴る。
ザク:時刻を合わせて叩けばそうなんでしょうけど。
ゲソ:いや、そういうことではない。すぐ近くに寄らないと聞こえないほどの小さい音だがな、遠くで鳴っている鐘に共鳴しているのだよ。
ザク:そんなことってあるのですか?
ゲソ:全部が全部ではないがな。同じくらいの大きさの鐘。つまり、振動数がほぼ同じ鐘にそういう現象が起きる。例えば、2つのギターの共鳴穴同士を近付けて、片方のギターの一番太い弦をボーンと鳴らす。するとどうなる。
ザク:もうひとつのギターの弦が震える、というかやはりボーンと音が鳴るのですね。
ゲソ:さよう。鳴るのだ。だからといって、音圧は到達するまでにかなり減衰するから同じ音圧で鳴るわけではないがな。これが共鳴、もしくは共振という。
ザク:なんとなく分かりました。つまり、音を大きくするのはなにかを共振させればいいわけですね。


ゲソ:そう。それが原理だ。だがな、共振するだけでは駄目なのだ。強く共振しなければな。
ザク:強く共振させる?どうやって?
ゲソ:こうやってな、筒に二つのコイルを巻く。巻き数の小さいほうに100Vの交流を流したとする。すると巻き数の2倍のコイルのほうは200Vの電圧が発生するのだ。なぜ繋がっていない回路に電流が流れるかはフレミングの法則だ。実際にはロスがあるので、周囲をシールドしたり、コイルに鉄芯を入れたりするわけだ。
ザク:なるほど、コイルを使って音を大きくするのですね。
ゲソ:あくまでも原理だ。が、ところが音はそうはゆかない。音なんて、非常に小さな信号なのだ。
ザク:ええ?じゃあ、どうすれば?
ゲソ:巻き数の小さいほうの回路、仮にAとしよう。巻き数の多い回路、これをBとした場合、Aの変化と比例した変化をBにもたらすような設計をすりゃいいわけだ。
ザク:なるほど、分かってきました。
ゲソ:Aの回路を入力回路、Bは出力回路と言う。
ザク:聞いたことがあります。
ゲソ:入力回路に音声電流を流す。音声電流というのは、音の波形を含んだ電流だな。機械で無い限りかなり複雑な波形だ。これと比例した音声電流をしかも振幅を強めて吐き出すと増幅されたということなんだな。いきなり増幅を莫大な数値にすると歪むので、通常は何段階かに分けて増幅するのだがな。もっとも、簡単なラジオなどでは1段だけのものもある。
ザク:それが原理なのですね。でも、いったいどうやったら入力電流の変化と出力電流の変化を比例させることが出来るのですか。
ゲソ:それから先は説明がややこしくなるし、電気の基本知識を学んでないと分からないだろうから、はしょって言えば、トランジスタが二つの回路の間に入り制御するのだ。これ以上の説明は省く。
ザク:なんか難しい気がしますね。
ゲソ:簡単なのだがな。昔は真空管だった。あれも同様だ。


ザク:なるほど。では、音声を電気的な信号に変換するのは、どういうことなんですかね。
ゲソ:マイクで拾うだろ?マイクが音声を電気的な信号にに変換してるのだよ。具体的に言えばこれもまたフレミングの法則なのだが、空気の振動を受け、一緒に振動するユニットがあり、その動きが磁力を発生する。その磁力が発生すると、電流が流れる。それが、マイクロフォンの原理だな。スピーカーの逆だな。原理は同じだけど。
ザク:なるほど、逆から音声電流を流せば、マイクもスピーカーと同じように鳴るのですね。
ゲソ:そういうことになるな。もっとも、マイクは微弱な音声信号を発生する装置だから、そんなものにスピーカーに流れるような電流を流せば一発でぶっ壊れるぞ。
ザク:なあんだ。実験しようと思ったのに。
ゲソ:昔のトランシーバーはスピーカーがマイクを兼ねている。そういうケースも意外に多いのだ。
ザク:勉強になりました。しかし博士、めっきりと寒くなりましたね。
ゲソ:なんだ、それ。急に話題を変えて。それにさっきからアクビばかりしてるじゃないか。無礼な奴だ。まあ、君にはちょっと難しい話だったかもしれん。
ザク:すみません。急に眠くなったもので。
ゲソ:寝不足か?だらしない奴だ。
ザク:でも、ほんと、勉強になりました。次回は是非、良いアンプ、悪いアンプなどというテーマでお願いします。博士の得意分野でしょ?
ゲソ:いやだ。君に電気の話をしても無駄だということが分かったからな。それより、君、このコーナーは誤字・脱字が多いんじゃないか?もっと気をつけたまえ。私が間違った表記をしていると勘違いされるとな、看板に傷がつく。
ザク:すみません。移行気をつけます。
ゲソ:それから、「俺達のホームページ」が独自のドメインを取得するそうじゃないか。今まで無料で講義をしていたのだから、この際、読者から購読料を貰ったらどうかね。
ザク:それはできません。博士、この研究所の大事な点は「科学すること」を広く啓蒙することです。博士の崇高な講義を少しでも多くの人に聞いてもらいたい、そういうことですよね。
ゲソ:ま、そういうことだ。しかし、このところ急に寒くなってきたな。冬だから仕方無いな。
ザク:博士こそ話題をすり替えてるじゃないですか。でもまあ、次回もよろしくお願いします。
ゲソ:へーい。

2003/12/6 うすらば研究所 Oretachi.jp
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ドクター・ゲソ
1957年生まれ。東京○○大学卒、三流企業に勤める傍ら、「科学やってみんべよー。」というコンセプトで独自に科学の研究を重ねる。2000年、自らを科学者と名乗り独立、くだらない発明などをするが、飽きちゃったので、現在執筆活動に専念する。ベイタウン在住。大の音楽ファンで、プログレロックが大好き。磯辺の「魚よし」では必ずゲソを注文する。

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