ベイタウン唯一の科学研究機関
- 第5話 -   出演:ゲソ博士 聞き手:助手のザクソン



釣りを科学してみよう!
やあ諸君、今日も元気に科学しようじゃないか!
ザク:だいぶ秋らしくなってきました。朝晩は寒いくらいですね。
ゲソ:月並みな挨拶じゃないか。しかし、ザクソン君は遠距離通勤だから早朝の寒さを私以上に味わってるわけだ。ご苦労さん。
ザク:朝は確かに冷えます。でも、まだ寒いとまではゆきませんよ。まだ10月になったばかりですからね。ただ、ずいぶん日が短くなったな、と実感します。朝、たいてい5時半に起きるんですが、今の季節は暗いですよ。
ゲソ:そうか。5時半頃といえば、私が麻雀からちょうど帰ってきて、ひとっ風呂浴びて、ビール飲んでる頃だよ。
ザク:また麻雀の話ですか?今回はやめときましょうね。
ゲソ:ああいいとも。それに最近やっと分かってきたが、麻雀は疲れる。
ザク:そりゃそうですよ!朝方までやってたら、第一健康に悪い。
ゲソ:何を言ってるんだ。私は全神経を、全能力を使って闘うことに疲れる、ということを言っているのだ。君はいつから健康を考えるようになったんだ!命より健康のほうが大事か?
ザク:そんなっ!でも、ある程度は考えますよ。家族がいますからね。
ゲソ:ふん。だから家族は厄介なのだ。家族を持って良かったかね。
ザク:それは良かったと思ってますよ。
ゲソ:本当か?いいや、君はウソをついている。好きなことが出来ない。好きなものも買えない。好きなだけ遊んで、好きな時刻に帰れない。家族の前での自分は本当の自分なのか。無理矢理、マイホーム主義を演じてないか?こどもの模範になるよう、本当の自分じゃない善良なパパを演出しているだろうが。若い女が好きなくせに、全く興味な無いフリをしているだろう。あるいは、近所の若い奥さんに恋してるかもしれない。出張でフーゾクに行ったことも、パチンコで負けたことも、ギターのエフェクターを買ったのも、頑なに隠す。体裁だけの、人間の形をした「一家の主」という記号が君だ。
ザク:ちょっと待ってください。それ、私ですか?まあ、当たってることもあるけど、そう露骨に言われてしまうと。
ゲソ:例えばの話だ。少々いじめ過ぎたかもしれないが。
ザク:完璧にいじめ過ぎですよ。それで、いったい今日はどんな研究テーマでゆきますか?

うすらば研究所の愛読者
ゲソ:その前に、君は私に隠していることがあるだろう。まずそいつを聞こうじゃないか。
ザク:隠し事ですか?特に無いですよ。
ゲソ:うそこけ!毎回うすらば研究所に対する反響がまったく無い、などとぬかしやがって。噂には聞いたが前回の麻雀の話はえらく評判が良かったらしいじゃないか。
ザク:あ、すみません。報告が遅くなりました。別に隠してたんじゃないのですが、確かにレスポンスはありましたよ。でも、メールではなく実際にお会いした方から直接私に言われました。「読んでますよ。」、「面白かったですよ。」という感じです。
ゲソ:そうか。面白いか。しかしなんだな。そういった感想が来るだけでもいいか。できれば、どういうことがためになったか、あるいは、ドクター・ゲソのどういう部分を偉大だと思ったのかを正直に述べてほしいものだ。
ザク:そうですね。私のほうで、そこまで突っ込んで聞いてみればよかったんでしょうが、気が利きませんですみませんでした。
ゲソ:なあに、謝ることはない。我々の研究成果によって、このベイタウンの人間たちがより幸せになってほしいと願うだけだ。
ザク:さすが博士ですね。私とはスケールが違う。
ゲソ:当たり前だ。君と一緒にされては困る。
ザク:失礼しました。

ゲソ:そうだな、今日のテーマは「釣りを科学してみよう」というのはどうだ?
ザク:釣りですか?フィッシングですね。博士も釣りをされるんですか?
ゲソ:されるんですか、はないだろ!こう見えてもアウトドア派なのだ。毎週釣りに行っている。先週も鴨川まで行った。残念ながらボウズだったがね。どうも外房は駄目だね。相性が悪い。かつては大原辺りででかい黒鯛を上げたことがあったがね。
ザク:へえ。釣りねえ。博士が釣りとやるなんて、これっぽっちも知りませんでした。でも、あれえ、確か、毎週ゴルフに行ってたんじゃなかったのですか。だって、先週もクラブ担いで出かけたのを見ましたよ。
ゲソ:ゴルフはやめた。今はクラブの代わりに釣り竿を入れている。
ザク:どうしてやめたんですか?あんなに燃えていたのに。
ゲソ:あんなつまらない遊びはうんざりだ。十数年やってみて、やっと分かったことがある。
ザク:なんでしょう。
ゲソ:つまらないということだ。いや、面白いこともあったんだが、最近どうもスコアが良くない。ドライバーはOBばっかり。アプローチも最悪。それに儲からない。一度、かなり前のことだが、法外な金額を握ったことがあった。私はね、金を賭けると不思議に強いのだよ。根っからの勝負師なんだな。健康にいいし、こんなに儲かるスポーツはない、と思っていた。しかし、近ごろは貧乏人もゴルフをやるようになったせいか、でかい勝負を望まなくなったんだ。貧乏人は、ゴルフをやるな。
ザク:やっぱりね。どうも博士はギャンブルに話が行ってしまいますね。
ゲソ:ギャンブルではない。ロマンだよ。

釣りはしっかりした計画から
ザク:でも、なんで釣りを始めたのですか?
ゲソ:だから、最近始めたわけじゃない。元々私は好きだったのだ。大原沖でヒラメでも釣ってみろ。猛烈にでかいヒラメが2、3匹。刺身にしたら、さぞやうまい。もっとも、そんなのが釣れたら、知り合いの料亭で1匹1万5千円円で買ってもらうけどね。船代が1万2千円だから3匹釣れば大儲け。もちろん、それが目的ではない。あくまでもどでかいやつが釣れたらの話だ。自分で釣った魚は自分で裁いて、刺身にして食う。これがなにより。
ザク:ヒラメなんて、うまそうですね。
ゲソ:そりゃ、言葉で言い表せないくらいうまいのだ。皿が透けて見えるくらいに薄く切って、飾りつければ、ふぐ刺しなんか目じゃない。しかも、釣りたてはシコシコしていて、微妙な脂と相まって、ああ、生きてて良かったと思う。
ザク:ああ、よだれが出てきた。でも、ヒラメでなくてもアイナメくらいで手を打つんですけどね。今度たくさん釣った時にご相伴に預かりたいですね。
ゲソ:たくさん、釣ったらな。君は、釣りをやるのかね?
ザク:好きですよ。あんまり行けないですね。しかも船釣りなんてなかなか出来ない。ヒラメは是非釣ってみたいですけどね。
ゲソ:ヒラメはな、「ヒラメ40」と言ってな、餌を口にして辺りを警戒しながら、ゆっくりと餌を食べる。つまり、アタリがあってから、ゆっくり40数えてから竿を上げろ、ということだ。それに典型的な底モノだから、錘から餌の位置関係など十分研究する必要がある。
ザク:なるほど、事前の勉強がないと、一朝一夕には釣れないということですね。
ゲソ:そういうことだ。今回の「釣りを科学する」は、魚の生態を知ることで、目的の魚を確実に釣るということを学ぶのであーる。
ザク:語尾を予測しなかったので驚きましたが、なるほど、それは面白そうな研究テーマですね。ベイタウンには既に相当な釣り好きがいらっしゃいますし、これから始めようとされている方も知ってますよ。しかし、博士は以前生物は苦手だとおっしゃってませんでした?
ゲソ:苦手じゃないさ。あんまり興味が沸かないと言ったまでよ。それに釣りは別格だ。釣りはただ魚を釣ればいいってわけじゃない。そこに至るまでのプロセスも大事だし、限られた時間の中で、どれだけのことが出来るかということも考えておかないとな。30分もいて何にも釣れないなら、じゃあ、どうすれば良いか。餌の問題か、それともウキ下の問題。それとも、ポイントを変えるとかな。
ザク:プロセスというと、釣り場までのアプローチも含まれますね。
ゲソ:もちろん。しかし、一番重点を置くのがプランニングだな。ターゲットを決めるのと、季節、天候、予算、必要時間、また体調など様々な条件で釣行の計画を立案する。例えば、メジナを釣ろうと思えば、次にどこへ?ということになるが、予算を考え、限られた時間内にベイタウンに戻ってこなければならないということをきっちり決めることだ。君だったらどこへ行く?
ザク:どのくらいの時間内ですか?半日しかないんだったら、伊豆には行かない。それとも、早朝出る船で昼頃戻ってくるとか。内房とか三浦半島だったら割りと近いし。銚子のほう、波崎あたりって、結構遠いんですよね。高速が無いから。
ゲソ:そんなに喋るな。これは私のページだ。インターネットとはいえ、紙面がもったいない。つまり釣りに許された時間というのは重要だろ?お互い忙しい身だ。それから、伊豆は高速代がかかり過ぎる。船もそうしょっちゅうじゃ金が無くなる。そう考えると、花見川の河口近辺というのが捨てがたい。千葉港でも良い。
ザク:でも、あんまり釣れないでしょう?
ゲソ:そりゃ保田あたりとは全然違うが、しかし、これから秋が深まってゆくにつれてハゼも結構釣れるさ。ハゼは、花見川の国道14号の橋の下近辺がいいな。河口の近くでは、サッパも釣れるし、スズキだって釣れる。
ザク:ルアーを投げている人は多いですよね。私の知人も大物を何回かゲットしました。
ゲソ:ゲットというのは抵抗があるな。今、「ゲッツ」なんてわけの分からんギャグ飛ばして銭儲けしている奴がいるが、あんなのが芸能人とは情けない。昔は良かった。桜井長一郎の美空ひばりは良かったな。大正テレビ寄席は知ってるか?牧伸二は最近見ないな。
ザク:なんでお笑いの話になっちゃうんですか!
ゲソ:ともかく、幕張近辺も十分釣り場の選択肢として考えておかなあかんのだ。
ザク:お、久々に関西弁でしたね。それから、博士。市原の釣り公園もそこそこ釣れますよ。入場料も高くないし。
ゲソ:私も行ったことがあるよ。それほど釣れなかったと記憶しているが。
ザク:あとは、袖ケ浦の東電の発電所の岸壁。本当は立ち入り禁止なんですけどね。それでも、あそこは釣れますよ。
ゲソ:ぶっ込みだな。石鯛の小さめの奴、すなわちシマダイがおるな。チヌも掛かるだろう。しかし私は、もっとネーチャーを楽しみながら釣りたいな。あそこまで行くんだったら、もうちょっと、いや、だいぶ先だが、できれば、富浦あたりの明鐘岬とかな。岩場の釣りは心が洗われる。

魚の心を読む!
ザク:心というと、やはり釣りも心理学?
ゲソ:心理学ではない。哲学だ。遠い水平線を見ているだけで、いろいろなものが見えてくる。己と語り合うのに、釣りは最高だ。だが、心理学ねえ・・・。強いて言えば、どれだけ魚の心が読めるかも必要だな。
ザク:魚の心を読む?
ゲソ:そう、魚の気持ちになってみたまえ。それで80%は魚が釣れる。
ザク:生態を知り、魚の心理を研究するってことですね。黒鯛だったら、どんな場所に生息して、どういう餌が好きか、またどんなときに警戒するのか、逆にどんなふうにすれば警戒されずに餌に飛び付いてくるのか、そんなところですかね。
ゲソ:そう!まさに、それ。君もなかなかやるね。まあ、それに季節によって時間帯によって居場所も異なるし、好物も変化する。難しいところだね。
ザク:山形県の酒田あたりでは、スイカ釣りなんてのもありますね。
ゲソ:最上川の河口だろ。人間がゴミとして排出していたスイカの皮を、いつの間にか魚が食うようになったんだな。少々複雑な心境になってしまうよ。
ザク:まったくです。
ゲソ:マナーを知らない釣り客も多いな。ゴミは散らかし放題。磯場に行けば、ヘドロのようにコマセが沈殿しているというし、それに、鉛のオモリやハリスがめちゃくちゃに絡んで、とても魚が棲める状態ではないらしい。その辺り、十分考えなくてはな。
ザク:おっしゃるとおりだと思います。自然環境を守ろう、と言ってるそばで、本来アウトドアを愛する釣り人がゴミを持ち帰らないなどというのは無性に腹が立ちますね。
ゲソ:お、なかなかいいこと言うなあ。じゃあ、今日もキマったところで、そろそろ終わりにしてプレナで焼き肉でも食うか。無論、君の奢りでな。
ザク:ぎくっ!

2003/9/30 Oretachi's Home Page
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ドクター・ゲソ
1957年生まれ。東京○○大学卒、三流企業に勤める傍ら、「科学やってみんべよー。」というコンセプトで独自に科学の研究を重ねる。2000年、自らを科学者と名乗り独立、くだらない発明などをするが、飽きちゃったので、現在執筆活動に専念する。ベイタウン在住。大の音楽ファンで、プログレロックが大好き。磯辺の「魚よし」では必ずゲソを注文する。

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